1. 化学プラントの異常診断システムに関する研究
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化学プロセスで異常が発生したとき、オペレータの迅速かつ的確な判断が求められますが、オペレータの誤動作や誤判断によって大事故に繋がった例が多数あります。
そこで、オペレータの意思決定を支援することを目的として、異常の原因の候補を提示する異常診断システムを開発してきました。
対象プロセスの定性的なモデルである符号付有向グラフ(Signed Directed Grapf:SDG)を作成することができれば、すぐに適用できます。
SDGはプロセス内の状態変数を点で、変数間の助長や抑制の因果関係を+や–の符号を持った有向枝で表現します。
SDGの作成は対象プロセス内に依存しますが、難しくはありません。
さらに、異常の伝搬速度や異常の検出時刻などの定量的な情報も付加することができ、様々な診断アルゴリズムを用意しています。
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Fig. 対象プラント(FCCU)の概要
*FCCU:Fluid Catalytic Cracking Unit
Fig. 対象プラント(FCCU)のSDGモデル
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2. 化学プラントの運転管理と安全管理に関する研究
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化学プロセスの安全管理の重要性は周知のところであり、古くから安全性評価が実施され、異常伝搬状況の解析に基づいた様々な対策が取られています。
しかしながら、異常伝搬状況の解析には多大な労力と時間を要すると共に熟練者の経験に依存することが多いために、異常伝搬状況の自動解析が望まれています。
そこで、本研究室では、異常診断システムの開発で培ったSDGの概念を応用した異常伝搬状況検索システムの開発に取り組んでいます。
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3. 流量計の故障診断システムに関する研究
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温度計や圧力計などの測定器は、運転中に取り外して検量・較正を行えるために、十分な時間と労力をかければそれらの計器の信頼性を維持することも可能です。
しかし、流量計は運転中に取り外すことができないために、定期点検・修理のために運転を停止したときでないと検量・較正を行うことができません。
しかも、流量計の指示値が真値からすれていても運転中にその程度を単独の流量計の指示値から判断できません。
そこで、真値からおきくずれた指示値を示すような流量計の候補を運転期間中に提示する故障診断システムを開発してきました。
最近では、指示値に含まれるずれの大きさの推定も行う改良も検討しています。
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4. 省エネルギー化のためのプロセス設計支援システム
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二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出量削減のため、化学工業においても、さらなる省エネルギー化が求められています。
省エネルギー型のプロセスは、操業にかかるエネルギーコストを削減できる反面、設備投資が増大してしまう可能性があります。
そのため、このようなプロセスの設計には、複雑なトレードオフ関係下での意思決定が求められます。
また、単一のプロセスの省エネルギー化が他のプロセスも含めた全体の最適解になるとは限りません。
そこで、マルチエージェントを用いて多目的・多主体意思決定機構を構築し、エージェント同士の競合や協調といった知的な相互作用を用いて、
化学プロセスの設計支援を行うシステムの構築を目指しています。
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Fig. プラント設計におけるコストのトレードオフ関係
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5. 電池・電気化学システム関連
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